米国のヒット映画Home Alone(「ホーム・アローン」1992年)は家に置いてきぼりにされた大家族の末っ子が、たった一人で泥棒を撃退するというコメディ映画である。犬もたった一人で留守番をする機会は少なくないが、あなたの犬が"ホームアローン(ここではペットが家に残されて家族全員が出かけてしまった状況の意味)"となった時に物を壊したり、過剰に吠えたり、トイレ以外の場所でオシッコをして困った経験はありませんか?
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分離不安症とは?
近年、飼い主のペットに対する意識向上と共に"家族"として屋内で飼育される犬や猫が増えて来た。家族の愛情に包まれて生活することはペットにとって幸せである一方、独りになる時間が少ないペットは、留守番をしなければならなくなった時に上記のような問題を起こすことがある。
本来、犬は社会性の強い動物であり、特に母犬や他の犬達と一緒に過ごしてきた犬達にとって独りきりで留守番することに慣れていないため、留守番中に不安が強くなる。飼い主が一緒にいる時には全く問題がないにも関わらず独りになると不安を感じ上記のような行動をとることを獣医学領域では「分離不安症(Separation anxiety )」と呼ぶ。分離不安は犬の問題行動における最も一般的な原因の一つ(Polin 1992; Voith and Borchelt 1985)である。
同じような問題はヒトの乳児でもみられる。親が自分から離れるともう戻ってこないのではないかと不安を感じ、単に隣の部屋に行っただけでもパニックを起こして泣くのである。
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分離不安症はどんな犬に起こりやすいのか?
早期に離乳することや単独飼育は分離不安症のリスクファクターではなく、飼い主の過剰な接触あるいは過剰な愛情(Hyperattachment)が分離不安症と関連がある。また飼い主と毎日1対1で密着した生活を送っている犬は、複数の家族と共に生活している犬よりも約2.5倍分離不安症になりやすい(J Am Vet Med Assoc 219[4]:460-466 )と言われている。社会性動物として、子犬が母犬や兄弟への愛着を形成することは正常なことである。子犬が家族といったん切り離されると、通常は人間との新しい生活を構築し、その環境にアジャストする。しかし、飼い主にひどく依存する傾向がある犬では分離不安症となる (Machum 1991)。
若い頃のトラウマ的な出来事を経験した犬も分離不安症となる可能性が高いと言われている。また愛情の喪失(ペットショップに長い間いることやアニマルシェルターでの長い生活)、突然の環境変化(新居への移転)、飼い主のライフスタイルの突然の変化、家族メンバーとの長期的あるいは一生の別れ(離婚、新生児の誕生、死別)、新しいメンバーの追加(子供、ペット)(Voith and Borchelt 1985; McElroy 1989)などもリスクファクターと言われている。
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分離不安症になるとどんな症状がでるのか?
飼い主がいる時は穏やかでも、いったん飼い主が外出して犬だけで留守番をさせた場合に犬が過度の不安を感じ問題行動を起こす。飼い主が外出の準備を始めた段階からドキドキしたり落ち着かず飼い主の後をつきまとうなどの分離不安症の"前兆"が始まり、破壊行動は通常外出後数分で始まる(Voith and Borchelt 1985)。タフツ大学獣医学部の行動薬理学教授のニコラス・ドッドマンは最初の30分が最も重要である言う。
過剰に吠えたり、リビングやベットなどトイレ以外の不適切な場所での排便や排尿をすることもある。
犬は快適でもグルーミングをするが、分離不安症の稀なサインとして自分の足をペロペロ舐めて皮膚が赤くなる(肢端舐性皮膚炎)こともある。不安という"ストレス"が原因の皮膚炎は通常大型犬に見られ強迫神経症の一形態と考えられている。
長時間独りにされたり制限された状況や緊張が多い環境に置かれつづけることによって引き起こされる欲求不満や不安の"SOS"なのかもしれません。
猫でも分離不安症を起こしえると考えられているが、犬と違って最も多いサインは「不適切な場所での排尿」と言われている。この場合ほとんどが飼い主のベットにするが、決して飼い主への"報復"ではない。
自分の犬が分離不安であるか知る方法とは?
以下の全てあるいはほとんど当てはまる場合は分離不安症の可能性が高い。
①独りになった時に問題行動が強く現れる。
②家にいるとあなたの後ろをついてまわる。
③帰宅した時に大袈裟に感情を表現する。
④犬が独りになると飼い主の留守の時間に関わらず必ず症状が出る。
⑤あなたが外出する準備を始めると興奮し、不安になり、落ち込む。
⑥犬が独りで野外で過ごすことが好きではない。
分離不安症の一歩手前の症状とは?
潜在的な分離不安症、つまりサッカーで例えると「レッドカード」の一歩手前である「イエローカード」となる症状は
①飼い主につきまとい、何とか飼い主の関心をひこうとする。
②飼い主が出かける準備を始めると、不安状態を示す。
③飼い主の帰宅時に、過剰に喜んで出迎える (Voith and Borchelt 1985)。
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