「イン・ザ・プール」 by 奥田 英朗
父親が経営する伊良部総合病院の地下にある精神科を担当する伊良部一郎、彼の元に迷い込んでくる病んだ人々の心は救われるのか?ロリコンでマザコンで注射フェチ…。小学生並みの精神年齢でとてもカウンセリングが勤まりそうにない伊良部なのに、難病・奇病に取り付かれた患者達はなぜか解放されていくのでした。トンデモ精神科医・伊良部はじつは名医なの?今日のケロの一冊→「書名:イン・ザ・プール、著者:奥田 英朗、出版社:文藝春秋、発行日:2002/05」
『イン・ザ・プール』は、奥田英朗による日本の小説作品及び、それを原作とした2005年の日本の映画作品。『精神科医伊良部シリーズ』の第一作目。第127回直木賞候補になった。伊良部総合病院の地下にある神経科を訪れる人々と、彼らを診る医師を描いた作品。
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映画化、アニメ化もされているようです。とにかく主人公・伊良部のキャラが立っています。図太い神経かと思えばもろく泣き出したり、天然かと思ったら演技していたりと、なかなか正体がつかめませんw 彼のチャイルディッシュな言動に振り回されている内に、ふと我に返る患者達。あまりの非常識さにあきれ返った拍子に自分を客観視できるようになるみたい。一種のショック療法になっていますね(笑)。
イン・ザ・プール:不定愁訴=ストレス性の体調不良になった出版社勤務の中年男が、健康のために始めた水泳にハマッテしまって水泳依存症になります。遠泳していると脳内麻薬によってスイマーズ・ハイになるらしい。和雄はいつしか泳がないと体調を維持できず、禁断症状が現れるまでになってしまいます。犯罪行為すれすれのドタバタ劇のあと、自分の状況を客観視できるようになった和雄は妻と和解します。夫婦間のちょっといいお話しで締めくくられるの。
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勃ちっ放し:淫夢&物理的ショックで陰茎強直症となった中年サラリーマン・哲也。ええと、局部が常時臨戦態勢になるのだそうです。職場の女子社員からは白眼視され、接待温泉旅行では追い詰められて非常ベルを押してしまう。かわいそうだけど笑えます。ベタですが次々に繰り出されるドタバタギャグの嵐ですw 体面にこだわって浮気妻に何も言えない哲也、理性からも世間体からも開放されて元妻と醜い争いを繰り広げる伊良部。「もうため息すら出ない。穴を掘って一生隠れていたい気分だ」あきらめの境地の哲也ですが、医学生研修のさらし者にされてついに怒りの大魔神に変身します。おとなしい人間を爆発させると危険なのです(汗)。
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コンパニオン:自分の美貌に自信を持つイベントコンパニオン・広美はストーカーの視線に悩まされます。ストレスの溜まる虚業の日々に強迫観念はドンドン強まる一方…。見栄と自惚れの世界も、そこで生き抜いていくのは大変なようですね。自意識過剰の被害妄想は行き着く所までいくしかないのでしょうか。結婚紹介所のサクラのバイトが爆笑ものでした。「相手の年収は450万円。それでどうやって生活するつもりなのか。今度なんかあってたまるか。25万円の入会金と1回3万円の紹介料を払って、おまえはだまされ続けるんだ」憑き物が落ちた広美に語りかける伊良部。「そういう病って否定しても始まらないからね。肯定してあげるところから治療はスタートするわけ」どこまでが演技だったのかな?
フレンズ:携帯電話で1日に200〜300回メールする高2男子・雄太はズバリ携帯依存症orz 軽いノリで、一見、友達の多い人気者。しかして、その実態は、友人ができずに登校拒否だったネクラな寂しがり屋。「予定は携帯で連絡がつくことを前提に組まれていた。つまり、事前の約束や打ち合わせはないに等しいのだ」1億総携帯の時代になって、約束は変更可能な軽いものになりました。携帯で誰かと繋がっていないと疎外感でパニックになる雄太ですが、相手はつれなくてギャップに悩みます。セクシーだけど無愛想な看護婦・マユミがよい味を出している。「いないよ」「さみしいよ」「一人がいいの。らくだし」友達がいないと言い切るマユミと伊良部にカルチャーショックを受けた雄太にも、転機が訪れます。「自分を変えて友達を作ろうと、入学以来、明るく振る舞ってきました。でも、ダメだったみたいです。無� ��はするものではありません」皆によい人だと思われたいなんて、それは無謀…。無理は体と心に毒です。
いてもたっても:中年ルポライター・義雄はタバコの火の始末が気になって仕方がない。確認行為が習慣化は強迫神経症と自己診断を下し通院するのですが、伊良部はカウンセリングを否定&実害がないからと放置(笑)。心のケアとかでカウンセリングが流行りですが、愚痴を聞いてもらう程度で解決するなら病気ともいえない気がします…。伊良部のカウンセリング無用論に賛同したくなる。ちなみに、義雄の症状は改善しません。が、麻薬の密売や注射器の不法投棄を突き止めて、お仕事的には成功していくの。禍福は糾える縄の如し。
ウルトラCのストーリー展開があるとか大きな感動に浸れるとかではありません。しかし、自分にも多少は当てはまりそうな心の病がコミカルに描かれていて癖になる。テンポよくサクサク読めます。天然ボケだったり演技していたり、いつの間にか症状は改善していたり治癒しないままだったり、漫画チックなオチだったりウェットな結末だったり。バラエティーに富んでいて、飽きさせない読者サービスも感じられます。そして、どのお話しも救いのあるラストで読後感がよい。明るい気分になれる元気なエンターテイメントです♪
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